私は不動産投資というものは「売却した時に初めて儲かったかどうかが分かる」と思っています。
例えば1000万の物件をキャッシュで買って、5年間毎年100万円ずつの収益を上げても、最終的な出口で300万円でしか売れなかったら、差し引き200万の損失になります。
支出:自己資金1000万
収入:賃収500万(5年間)+売却額300万=800万
差し引き:-200万
これでは5年間何をしていたのか分かりません。借入していたら、もっと傷が大きくなる可能性だってあります。
では、どんな条件だと利益が出るのでしょう?
様々な条件で利益を出すことは可能ですが、もし自己資金の数倍の利益を得たかったら、次の2つの方法が良いと思います。
①1棟物RC物件を高利回りで購入し、5年後にそれより低い利回りで売却する
②木造アパートや戸建てを土地値以下で購入し、5年後に土地値で売却する
「5年後」とわざわざ書いてあるのは、「長期譲渡所得」の要件を満たすからです。
つまり売却益への税金が39.63%→20.315%になります。
そして私は利益が出るのなら「不動産は出来るだけ早く手放す方が良い」と考えています。
○長く保有していると「不動産固有のリスク」にさらされること
参考:シロアリ・訴訟・滞納など
○年数が経つにつれて、老朽化に伴う修理費用が増えること
○築年数が経つと、次の買い手がローンを組みにくくなること
などの理由からです。
それでは、売却のシミュレーションをしてみます。
まず上記①一棟物の場合です。(単位は全て万円です)
融資条件 金利2%30年
物件価格 10000
諸経費 800
借入金 10000
利回り 10%
諸経費分800万を自己資金で払い、残りはローンを組みます。
この物件を5年間保有し、利回り9%で売却します。(賃収1000万÷9%=11100万)
5年間の収支表です。
1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | |
賃収 | 900 | 900 | 900 | 900 | 900 |
返済 | 450 | 450 | 450 | 450 | 450 |
諸経費 | 150 | 150 | 150 | 150 | 150 |
CF(キャッシュフロー) | 300 | 300 | 300 | 300 | 300 |
CF(税引後) | 240 | 240 | 240 | 240 | 240 |
CF累計 | 240 | 480 | 720 | 960 | 1,200 |
借入金 | 9,730 | 9,480 | 9,230 | 8,960 | 8,700 |
賃収が900万になっているのは、ずっと満室ということはほぼありえないので、90%の稼働率で計算しているからです。
5年間で税引き後の手取り収入が合計1200万。借入の残高が8700万になっています。
売却した時の収支表です。
売却価格 | 仲介料 | 諸経費 | 借入金 | 利益 | 税金 | 手取り |
11,100 | 366 | 111 | 8,700 | 1,923 | 391 | 1,532 |
売却した時の税引後手取り利益は1532万です。
5年間で1200万の累計利益がありますから、
合計 1200+1532=2732万
になります。
5年間で、800万の自己資金が2732万、3倍以上に増えた計算です。
これを達成するのに重要なことは次の3つです。
○高利回りで購入すること
○5年後に築年数が25年以下であること(買い手が融資を受けるためです)
○5年間、家賃収入を落とさないこと
次に②の場合です。
融資条件 金利2%15年
物件価格 4000
諸経費 320
借入金 4000
土地の価値 4200
利回り 10%
この物件を①と同じように5年間保有します。
収支表です。
1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | |
賃収 | 360 | 360 | 360 | 360 | 360 |
返済 | 310 | 310 | 310 | 310 | 310 |
諸経費 | 36 | 36 | 36 | 36 | 36 |
CF(キャッシュフロー) | 14 | 14 | 14 | 14 | 14 |
CF(税引後) | 11 | 11 | 11 | 11 | 11 |
CF累計 | 11 | 22 | 34 | 45 | 56 |
借入金 | 3,750 | 3,510 | 3,270 | 3,030 | 2,780 |
返済期間が15年なので、ほとんどキャッシュフローが出ません。その分、借入金の減少は早いです。
5年間で税引き後の手取り収入が合計56万。借入の残高が2780万になっています。
売却した時の収支表です。
売却価格 | 仲介手数料 | 諸経費 | 借入金 | 利益 | 税金 | 手取り |
4,200 | 143 | 42 | 2,780 | 1,235 | 251 | 984 |
売却した時の税引後手取り利益は984万です。
5年間で56万の累計利益がありますから、
合計 984+56=1040万
になります。
5年間で、320万の自己資金が1040万、これも3倍以上に増えた計算です。
これを達成するのに重要なことは次の2つです。
○土地値と同じか、それ以下の価格で購入すること
○5年間で下落しない見込みのある地域を狙うこと
この物件の場合は土地の価値が全てですので、地域や土地の形が非常に重要になります。
また買い手は恐らくプロになります。
上記の2パターンとも、5年間で自己資金が3倍以上に増えています。
1000万の自己資金を用意して、5年後に3000万。もう1回繰り返して10年後には9000万です。
プロは不動産を長期保有せず、こんな風に回転させることが多いです。
(税金の問題が無いので、もっと回転が速いですが)
私は現在不動産投資をしていませんが、将来再びやるならこのパターンで投資すると思います。
もちろん、不動産投資はリスクを伴います。借入していたらリスクはより高くなります。
成功率を高めるには、当たり前のことですが
良い物件を安く買う
ことです。
「投資の利益は買った時に決まる」と良く言われますが、不動産投資はまさにそうです。
私の場合でも明らかに割安な価格で買わなかった物件は、利益がほとんど出ないか、損をしました。
5年後にはまず利益が出る、最低でも損はしない、と確信が持てなかったら、最初から買わない方が良いと思います。
もしかしたら「売却前提の不動産投資」には抵抗のある方もいるかもしれません。
実際、不動産投資をしている方の中には、丁寧に賃貸経営をして成功している人も大勢いらっしゃいます。
これはあくまでも、私の考える「不動産投資で利益を出すための1手法」だととらえて、参考にしていただければ幸いです。